お金がほしい

お金がほしい

2020年10月をもって更新をストップします。永らくのご愛読ありがとうございました。

凪のあすから 第5話「あのねウミウシ」感想

アニメ初鑑賞。原作コミック未読。
素人がテキトーなことを書いているので、訂正や批判等あったらぜひにコメントお願いします。


前回までに残った謎は以下のとおり。

・うろこ様の正体
・1話ラスト付近のまなかの発言「おうたの練習」とは

 

↓前回の記事↓

ex-finprethe.hateblo.jp

以下ネタバレあり。

 

冒頭、早起きして朝食を作るあかり。
親父さんとは暖簾と新聞という二重の壁がある描写から、まだ距離は詰められていない様子。

親父さんの「地上の男はやめておけ」というのは、我々に置き換えると「外国人はやめておけ」という意味合いになるのかしら。
あかりの「父さんもやっぱり海の人だね」という発言は、彼の息子である光が「あいつはやめておけ」と人柄で判断したことに対する皮肉かな(笑)

 

この直後、うろこ様の興味深い発言。

御霊火は海神の心。御霊火は教えてくれる。地上と海とはその境を完全にするべし。やがて地上は・・・。ぬくみ雪は全ての前兆。

この物言いだと、そう遠くない未来に地上では良くないこと(たとえば地震などの自然災害)が起きると思われる。
失踪した美海の捜索時にちさきが「このごろ夜冷えるから・・・」と発言していたことから察するに寒冷化かも。

 

あまり神様というものについて語るつもりはないが、仮にその存在が人々の思いの結晶であるとするならば、海神の心とはすなわち海村の人間の心である。
御霊火の揺れが激しくなったのは、親父さんの心の揺らぎと考えてもよいかもしれない。

いち視聴者としては、海村における立場にとらわれず、嬉々として娘の門出を祝ってほしいものではある。

 


OP終了後、場面はダークモードのちさきへ。

個人的な意見だが、ちさきと紡くんはかなり相性が良いと思う。紡くんも「海が好き」と言っていたことだし(笑)。

ちさきは自分の本心を押入れの奥底に仕舞ってしまうような性格だが、紡くんは良い意味で無神経なので、彼女の本質を正面切ってズバっと言い当ててしまう。

それはちさきにとってかなり酷なことだが、同時に救いでもある。

(この時点ではあかりの精神状態のほうが危ういが、)光への気持ちについてウミウシ(=自分の本心と向きあう場所)を求めていたちさきが、紡くんという解決策に出会う。だから自分の本当の気持ちを語ってしまう。

 

  • 踏切のメタファー

踏切というのは「分断」という意味で、アニメでは頻繁に用いられる手法の一つである。それこそ新海誠監督の「秒速5センチメートル」冒頭、貴樹と明里を踏切で分断させることにより「来年もまた桜一緒に見られるといいね」という死亡フラグを完成させている。
たしか「君の名は。」でも踏切が効果的に用いられていたはず。

とはいえ今回の踏切は分断とは少し違う。なぜなら、どちらかが電車の向こう側に行ってしまう演出ではないし、このシーンでは遮断機が上がるところまで描かれていない。

f:id:qfbrj:20200523184116j:plain

ちさきはまなかに対して「気にしないで!」ではなく「忘れて!」と無理な相談をする。遮断機が上がるところまで描かれていないのは、自分の気持ちを隠したままでいたいという気持ちと重なる。

また、電車が彼女らを追い越してゆくのも面白い。これはちさきの意図に反してまなかに自分の心中を知られてしまったことと、もしかしたらまなかが光に対する気持ちに気付く、という暗示でもあるかも。

5話後半で描かれる美海の独白シーンでも電車の描写があったことから、押し込めていた気持ちが伝達されることを示していると考えてよいでしょう。

 

 

場面はカフェ「トライアングル」へ。にしても意味深な名前。
あかりの回想シーンでは、これまでのイメージを払拭する勢いの溌溂とした美海が確認できる。

あかりがカフェを出てサヤマートに行くと、そこには美海の姿が。
おそらくだが、美海はガム文字を取り去りに来たのだろう。それは光の「卑怯なやり方」という言葉が彼女の中で呪いになっているため。
しかしその文字を前にして、自分は何をしたかったのか。これからどうしたいのか、どう在りたいのか。そういうことを考えていたのだと思う。

そこにきてあかりが「ちゃんとどっか行くから」と発言したことで、自分のやり方が間違っていたことを知った美海。では、その次のアクションとはいかに。

 

 

場面変わり、先島家。

電話の呼び鈴を意に介さない父。分かる。絶対聞こえているはずなのに、頑として反応しない謎。基本家に電話がかかってくるときって父親宛が多いんだから、むしろ積極的に動いてほしいんですよね。

電話口の向こうでは、美海が行方不明になったと焦るあかり。

光「いくら大人ぶったってな、お前なんか俺の母ちゃんの代わりにはなれねぇんだよ!だからとっとの美海の母ちゃんの代わりになれ」

良いセリフですね。これは今回のことに限らず光が常々抱いてきた鬱憤にも聞こえる。親離れならぬ姉離れ。むしろあかりにとっては弟離れならぬ海離れ、か。

 

流れ星の描写については後述。

そして急にかっこよくなる親父。
親父さんには海村の立場上の問題とあかりに対する態度の問題がある手前、大っぴらには行動できない。だからこそ「行ってやれ」は自分ができる最大限のフォローである。
あと、今後はちゃんと電話を取りましょう。

 

捜索シーン。テレフォンカードを取り忘れるあかりやら、線路の上を歩いて美海を捜索する光やら。この子ら大丈夫かしら。
と思いきや美海のほうから顔を出す。

一方のあかりはまたもやカフェ「トライアングル」前にて至さんに心中を吐露するわけだが、ここまで来るとちょっとしたギャグというかスタッフの遊び心が過ぎるんじゃないかと(笑)
こんなこと言うと怒られてしまいそうだけど。

とはいえあかりの回想シーンから、このカフェにはみをりさん(至さんの元妻)存命時の思い出が詰まっているので、この場所以外に選択肢はないでしょう。

 


その後。話題はまなかと美海による「赤いウミウシ」について。

5話のサブタイトル「あのねウミウシ」に象徴されるように、今回は4人のウミウシ(=隠された心境)にスポットを当てた回であったように思う。

一人目はちさき。光との関係性に悩み、紡くんをウミウシにしようとした。
二人目はあかり。建前で造った武装笑顔が決壊し、けっきょく至さんに洗い浚い願いを吐き出している。
三人目は美海。本人の発言でもあるが、ガム文字をウミウシ代わりに使っていた。そして後半、光が美海にとってのウミウシ役を担う。
四人目はまなか。と言っても彼女は自分で自分の気持ちに気付いていない。「赤いの見つかったら、何を話すの?」という美海の問いに答えを見出せない。

 


美海「大好きにならなければ、あんなに苦しくならない」

おはずかしい話、これまで美海の行動理念がいまいち理解できていなかったのだが、この言葉でようやく納得。こうやってきちんと答えを提示してくれるところがアニメの良いところだったりする。

自分が好きなのは母親だけで、母親が好きなのは美海。だから自分はひとり、と。
とはいえ感情が屈折しすぎているというか、「どっかい」とガム文字を残すのは解決策が斜め上すぎるというか。女の子ってみんなそんな感じなのでしょうか。

まぁ美海が「好きにならなければ」と思った時点ですでにあかりを好きになってしまっていたので、はじめから自己矛盾が生じていたのだろう。生きるって難しいね。

f:id:qfbrj:20200523183605j:plain

美海の周りにはたくさんのクマノミが。

まなかが紡くん(の乗る舟)によって地上に引きあげられて憧れを抱いたように、海に飛び込んだ美海を光が引きあげる演出が良い。これはフラグか。

 

  • 三日月と流れ星

流れ星はめったにないという意味と、超自然的な不可思議さから「願い」と「不吉さ」の印象が強い。
ハウルの動く城」ではカルシファー誕生のとき、ハウルが流れ星を捕まえ、食べたシーンが描かれていた。
カルシファーがソフィーの髪の毛(人間の一部=思い)を食べて元気になったように、流れ星は誰かの思いそのものである。
あかりは光に願いを託し、美海は光に自分の心中を吐露した。

上弦の月は、満月に向かって進んでいくという成長を表している。

 


ガム文字の完成によって、美海の本当の気持ちに気付いたあかり。
美海の母親としてではなく、あかりとして。あかりは娘としてではなく、美海として。いいですよね、こういう関係。僕もバツイチ子持ちと結婚するときはこう思うようにしよう。

「美海ね、海が大好き」
母が好きなものは子供が好きなものである。美海は母親が好きだった海が大好きで、海のようなあかりも大好きと。感動。お見事。

 

  • 太陽の役割

話は少しそれるが、本話は特に太陽の出番が多かったように感じる。

もちろん海と大地の物語なので太陽の出演頻度が他アニメより高くなるのは必然であるが、本話ではその傾向が顕著であった。

・ちさきがまなかに「忘れて!お願い!」と懇願した直後(ちさきの気持ちがまなかに露呈したシーンでは、光芒が描かれている)
・あかりと至さんが美海に自分たちの関係を打ち明けようと決心したとき
・あかりが美海の本心に気付き「隣にいさせてほしい」と告げたとき(朝日が昇り、どっかい「かないで」に光が当たる演出は感動的)

 

OPのラストでもまなかが太陽を見つめ、そちらに向かって走り始めるかのような描写がある。

実は1話を見返して気付いたのだが、紡くんとまなかが運命的な出会いをした瞬間、紡くんは太陽をバックに描写されていた。つまり、太陽は憧れの象徴でもあるのかなと。

f:id:qfbrj:20200523183601j:plain

1話冒頭シーンより

いずれにしても気になる。

 

 

というわけで今回はここまで。

本話のハイライトはあかりだったが、ひとえに「あかり回」といえども様々な人間関係が複雑に絡み合い、そのうちのひとつがようやくひと段落ついた、という位置づけかと。

次回は小休憩としてギャグ回でも構わないのだが、次回予告を見る限りそうではなさそうですね。

 

前回までの謎は依然として不明。増えた謎は、冒頭うろこ様が発していた「ぬくみ雪が兆しとなっている、とある変化」について。これはストーリーを追うごとに明らかになり、今後の展開にも大きくかかわってくるところだと思うので注目したい。

 

残った謎

・うろこ様の正体
・1話ラスト付近のまなかの発言「おうたの練習」とは
・5話冒頭のうろこ様の発言「地上と海との境を完全にするべし」の理由

 

それでは、また。

 

ex-finprethe.hateblo.jp