お金がほしい

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先に謝っておきます。ごめんなさい。

映画『ロケットマン』はミュージカルなのかという疑問

映画を観て、うろ覚えながらも、ふとこんな話を思い出した。

エルトンとバーニーは、とある部屋にいた。そこに初対面のプロデューサーが到着し、彼らの楽曲について様々に褒め讃えたあと、
「君の声は素晴らしいよ」
エンジニアはそう言って、バーニーに向けて握手を求めたのだった。

(追記:ガス・ダッジョンというプロデューサーのことです。)


どこかのテレビ番組から得た知識なのだが、いかんせん記憶力に乏しいのでかなり間違っているかもしれない。
だが、エルトンとバーニーを並べたとき、プロデューサーは迷うことなくバーニーをミュージシャンと思い込んだ。

つまり、それほどにエルトンはあまりにも普通すぎた。
天才と言われた一人の男も、もとはただのありふれた男に過ぎなかった。

フレディマーキュリーもプリンスもデヴィッドボウイもマイケルジャクソンも、スターと呼ばれる人間は等しくみな孤独だったという。
誰も手が届かないほど遠い場所にあり、輝いているから「スター」と呼ばれるのだろうが、星と星の距離は果てしなく遠い。そんな含意もあるのだろうか、なんて考えた。


しかし孤独とは、得てして周りに誰かがいるときに使われる言葉である。
フレディにはジムやメアリーが、そしてエルトンにはバーニーがいた。

そんな僕ら凡人のような幸せを、この映画を通じて見ることができた。

 

映画の感想にうつる。

率直に感想を述べるならば、とても良かった。
久しぶりに時間を忘れて見入った作品だったし、最初の5分の流れは僕の映画史上もっとも意味が分からなかったし、タロンエガートンは歌がうまかったし。

まさかクロコダイル・ロックを聴いて涙腺が緩む日が来ようとは夢にも思わなかった。

正直なところそこまで熱烈なEJのファンというわけではなかったので、エルトン・ジョンが芸名であったことや、ステージ上でド派手な衣装を纏っていた理由なんかについても知ることができた。
なぜタイトルが「ロケットマン」だったのかも分かったし、そういう意味でも実り多い時間であった。

当初、これは「ミュージカル映画」と聞いていたのだが、はたしてこれはミュージカル映画なのか。観終わった後で疑問に思った。
というのも、この映画ではエルトン・ジョンの20を越える楽曲が歌詞を変えることなく登場し、シーンに応じて効果的に使われていたからだ。

もちろん、心情を音楽に乗せて歌い上げる映画は、紛うことなくミュージカルである。
けれども、映画の製作にあわせて歌が作られるのと、歌ありきで映画が作られるのとではまるで違うような気がするのだ。


これはあくまで個人的意見というか推論に過ぎないのだけど、この映画を製作する当初、ミュージカル映画にするという方向性は存在しなかったのではないだろうか。

もし僕が誰かの人生を映画にするならば、間違いなく「ボヘミアンラプソディ」のようにひとりの人間を追求し、ドキュメンタリーや再現ドラマのような形式で進めただろう。


だがこの映画のばあい、曲があまりにエルトンの過去と重なりすぎて、ひとつひとつのシーンとリンクしすぎて、心情を曲に乗せて歌うミュージカルが採用されたのではないだろうか。
そのくらい1曲1曲が彼の内省的で孤独な心境を表現していたし、もしエルトン・ジョンの曲を聴いたことのない人がこの映画を観たら、映画のために書き下ろされた曲と思うに違いない。

エルトンは、バーニーの詩が最もイマジネーションが湧くと述べている。
また、エルトンとバーニーは50年以上喧嘩をしたことがない仲だというが、それはつまりそういうことなのでしょう。


そしてなにより、劇中歌のメロディがなんと素晴らしいことか。
エルトン・ジョンの曲は、表現は悪いが引っ掛かりがないというか耳馴染みの良さが傑出しており、主役のようで引き立て役にもなれるという万能感たるや。

正式なアナウンスはまだだが、来年の春頃にファイナルツアーで来日公演をおこなう予定なので、その際はぜひもなくチケットを取って生の音を体感したいと強く思う。

 

さて、最後にこの映画がヒットするかどうかについてだが、「ヒット」という言葉がどこからどこまでを指すのか、ファジーすぎて難しいところである。
が、ひとつ分かったことがある。

帰り際、映画館の出口直前でおじさん2人組が「大人の映画だったな。ま、リピートはしないけど」と語らっていた。僕も全くの同意見である。
この映画は伏線もないし特別ゲストがカメオ出演しているわけでもないし、最後に大感動の幕切れがあるわけでもない。

だが、一見の価値はある。
というか、「Your Song」しかしらなくても楽しめるし、なんだったらエルトン・ジョンを知らなくても十分に楽しめる。

伝記の良いところとミュージカルの良いところがマッチした傑作であるので、是非一度ご覧いただきたいと思う。
ついでに感想をコメントでいただけると嬉しい。そんな、他の人の意見がとても気になる映画であった。