お金がほしい

お金がほしい

先に謝っておきます。ごめんなさい。

春は遠退き、やがて近づくのだろうか

我がバイト人生にも、ついぞ春の訪れを感じる季節となった。
なんと後輩として新入りの女の子が入ってきたのである。


後輩の女の子。なんと良い響き。これだけでご飯3杯は多いから食えないけど。


とまあ序盤から飛ばしてしまったが、なにせ数年にわたるアルバイト生活で見ず知らず&同年代&女の子という組み合わせは一度もなかった。
よって新入りの女の子という甘美な響きだけで精神がメルトダウンしてしまうほどに、僕としては喜ばしい出来事であった。


これまで同じ職場で働いた女の子は、どういう偶然か全員が顔見知り。
いや、最初の知り合いは僕が紹介、というか斡旋したので必然であるが、その女の子がのちになって連れてきた女の子もやっぱり僕と同級生の知り合いだったため、もはや職場が同窓会会場みたいなものだった。

おまけにその知り合いの女子というのが既婚者であり、どうやらもう子供もできたそうで。
子供は生まれたが、そこで僕らの関係に何かが生まれるわけではない。


その次のバイト先ではあまり期待せず、しかし一縷の希望を持って職場に行くと、なんと10年ぶりに小学校の同級生と再会。
休み時間は誰とも喋らずひたすら読書していた系の女子と奇跡的な再会を果たすという、まったく嬉しくない偶然に見舞われてしまった。

ちなみにそれ以外のスタッフは全員30超えの子持ちばかりだったので、恋愛とか色恋などに発展するわけがないのである。

 

そうして3度目の正直。
今回ついに、僕はささやかな幸せを手にすることができた。

以前その女の子が職場に面接へと来た際、僕は出勤日ではなかったのだが同僚の男性がその女の子を目撃していたらしい。
あまり近くでは見られなかったものの、「遠目で見る限りではけっこう可愛かったよ」などと期待させることを言うので、昨日という日を待ちわびていた気持ちも多少はある。


けれども僕は後姿めっちゃ美人だけど前から見たらそうでもなかったというケースと、前髪で顔が見えないがゆえに都合のいいように脳内補正していたというケースをいくつも知っている。
おまけにその同僚もあまり視力がよくないので、今回も裏切られる準備だけはきちんと怠らなかった。


そして彼女の出勤時間、実際に会ってみると良い意味でも悪い意味でも期待を裏切らないというか、まぁなんてーの?あれだよ、あれ。あれで分かるでしょ、ね。

決してマツコ・デラックスのような体形だったとか平安時代だったら美形だったとかそういうのじゃなくて、多分皆さんが思い浮かべるであろう一般的な大学生女子の顔。そうそう、それそれ。
いかんにも名状し難い。文章書いているのに表現が思い浮かばないとは情けない限りだが、さすが高校時代「はらぺこあおむし」を題材に読書感想文を書こうとして挫折しただけのことはある。語彙力が乏しいのだ。


しかしその彼女、初出勤日だというのになんというハイスペック。挙措が出来上がっている。


僕は出勤するたび1日に5回は怒られているのだが、おそらく怒りたくなるような僕の人間性にも問題はあると思う。
塾講師の社畜時代以降、アルバイトに対して何の思い入れもないためのんびりマイペースでやっているし、毎回「しまった」と思いつつも同じミスばかり犯している。

そのうえ注意されているときは真剣に聞いているフリをして「うっせぇな」とか思っているので、まるで学習しない。こいつもうダメだ。


けれども新入りの女の子は違う。
僕と同じようなミスをしても、けっして怒られない。そりゃ初日だから、というのも当然あるだろう。

しかし違うのだ。社員の人の諭し方や目の鋭さ、力の入れようがまるで僕のときとは違う。

同じことをしてもイラッてくる人と、なんだか許せちゃう人っていると思うんだけど、彼女は後者なんだろうな。
僕もちょっと教えたけど、もう全部許しちゃったもんね。ちくしょうズルいぜ。

おまけに元来の人となりができているため、何かを言われなくても進んでそれとなく対応できてしまうことが多々あった。おまけに一挙一動が丁寧で、あーもう負けたわ。


そして個人的にトドメを刺したのがその女の子、年齢がなんと僕の1つ上だというのだ。

僕は姉がいるから、年上の女性は恋愛対象として見ることができないどころか恐怖の対象である。
今は僕のほうが職場の立場上先輩だけど、そのうち名実共に抜かされる日も近いだろう。なんか身長も170センチくらいあるみたいだし。


というわけで、全然春が訪れていなかった。むしろ冬の厳しさが増した。
こうして僕の青年期は、開幕することもなく閉幕へと向かっていくのだろう。


ともあれ、その女の子が左手の薬指になにか光るものを付けていたのは、たぶん見間違えだとは思うけど。