お金がほしい

お金がほしい

先に謝っておきます。ごめんなさい。

「何でもいい」

「何でもいい」

この言葉を聞いたとき、人はどう感じるだろうか。

「今日の晩御飯のおかずって何がいい?」
「何でもいいよ」

「ねぇねぇ、明日どこ行こっか?」
「何でもいいよ」

「ゴメン!カレー作ったのにご飯炊くの忘れてたっ!」
「ナンでもいいよ」

こんな機械的な返事しかしないヤツは間違いなく嫌われる。え?そうです、ごめんなさい僕のことです。

だがこれは致し方ない。未だにこればっかりは自分のせいじゃないと思っている。

姉「今度家族旅行行こうと思ってるんだけどどこがいい?」
僕「月!」
姉「は?」

母「夕ご飯のおかず買って来るけど食べたいものある?」
僕「キャビア!」
母「は?」

こんな幼少期を経た僕が次第に口を閉ざしていったのも無理はない。
あらゆる希望が目の前で打ち砕かれ、そしてはかない夢と化していったあの日々...

そして時は流れ、いつしか僕も大人になった。
するといつの間にか、自分でも気付かぬうちに僕はこの言葉の魅力に取り憑かれてしまったらしい。
ひとたび口を開けば「何でもいい」「いつでもいい」「どこでもいい」のエンドレスリピート。

何でもいい―――まさに魔性の言葉。RADWIMPSのあの名曲も「なんでもいいや」に即刻変えるべき。

といった感じで、僕同様この言葉を挨拶がてら多用している人も少なからずいるのではないか。

しかしこの言葉の重要なポイントは、表層からだけでは汲み取れないもっと深淵に存在する。

それはそう、「何でもいい」というのは決して「どうでもいい」という意味で使っているのではないという点だ。

「何でもいいよ」と言われたからといって誕生日プレゼントで図書カードは御法度。
「何でもいいよ」と返信が来たからといって初デートでサイゼ連れて行ったらほぼ間違いなく嫌われる。

んでもって後日小洒落たカフェかどっかで開かれた女子会で「てかアイツ初デートでサイゼ連れて行きやがってさ~、マジあり得なくない?」とか店内に響き渡るくらいの大声でバラされる。

やだ、怖すぎる。

いや、ちょっと待って。その前にどうして女子ってサイゼ嫌うの?
貧乏な時期に散々お世話になっていたくせに、どうして多少金銭的に余裕が出てきたらって朝一のジョナサンとか入って野菜ドリアとか頼んじゃってそんなこと言うの?ヒドくない?

ついこの間までミラノ風ドリアが一番好きとか言ってたのはウソだったの?

おっと、つい感情的になってしまいました。ごめんなさい。
 

閑話休題
つい話が逸れてしまったが、「何でもいい」という言葉はこのように実に奥が深い。
もちろんその所以には言葉自体の多義性が挙げられるのだが、僕個人としてはまさにこの言葉こそ日本人の性質を端的に示していると思うのだ。

例えばこんな感じで。

女「え、うそ。この期間限定パフェってやつめちゃくちゃ美味しそうなんですけど!やばーーいっ!」
男「」
女「え、でも待って。コッチのレアチーズケーキもヤバくない?レアとか付いてるしなんか凄そうなんですけど!」
男「」
女「え、やっばーい。どうしよーー決めれんないよーーっ。ってアレ、そういえばあんた何食べるか決めたの?」
男「...俺は別に、何でもいい」
女「え、マジにっ? それじゃさ、このパフェ頼みなさいよ!いいから、絶対美味しいから!」
男「...別にいいけど」
女「ホント?うーれーしーいーっ!んじゃアタシはチーズケーキ頼もーーっと! あの、すいませーーん!」
店「はーい」
女「このパフェ1つと、あとこのレアチーズケーキ1つ」
店「かしこまりました」
女「え、やっばーーい!今からチョー楽しみなんですけど。あっ、そうだ。あんたが頼んだパフェさ、マジ美味しそうだからイチゴとアイスとウエハースみたいなのだけでいいから分けてくんない?」
男「...おう」

ざっとこんな感じ。
この場合は空気を呼んだ男の「何でもいい」発言によって2人の仲が壊されずに済むという結果になった。

まぁでもきっとこの男はCOACHのバッグを買わされた翌日くらいに預金残高が底をつき、乗り換え割とやらを絶賛実施中の別の男の元へと逃げられてしまう運命なのだろうが、いずれにしてもこの場面は「何でもいい」という言葉が2人の世界を救ったことになる。

そう、「何でもいい」とはまさに曖昧さの化身。
日本人は曖昧とか有耶無耶とか適当とかが超大好き。この上なく愛してしまっている。

でもそりゃ至極当然。ヘタに何か言って責任とか絶対取りたくない。

「ちょっと遠いけどあのお店行ってみようよ!」なんて言ってしまったばっかりに、道路は渋滞の連続。なぜか毎回毎回信号がちょうど赤になる。前の車遅すぎてイライラ加速。カーナビも一番教えてほしい目的地周辺になるといきなり音声案内を終了しますとか言い始めて慌てふためき、そうこうしているうちに店の前を通り過ぎる。

んでもってやっと着いたお店が本日休業日。
バックミラー越しに突き刺さる視線が痛い。痛すぎる。

そんな経験を一度でもしてしまった日には、もういっそ「何でもいい」と言ってしまえば楽になることに気づくのも時間の問題。

しかも「具体的じゃないけど一応自分の意見は言ったぜ☆」という妙な自信が沸々と湧いてきて、ちょっぴり楽しくなってきたりする。
ちなみに僕はこの現象を「何でもいいやーズ・ハイ」と呼んでいる。(大嘘)

ただ皆さんもそうではないだろうか。
日本人が重んじる「協調性」もちゃんと「何でもいい」に入っているし、他人との議論や喧嘩を避けたい心持もしっかりと含まれている。
「何でもいい」という言葉はマイナスなイメージが消えないが、それでも発した側に悪意があるとは限らないのだ。

でも男子諸君。1つだけ注意してほしいことがある。ここ重要。多分試験に出る。
女子からの「何でもいい」はマジで気をつけたほうがいい。読み間違えると後でとんでもないことが待ち受けている。
女子はこの「何でもいい」を巧みに使い分けている。マジで怖い。

とはいえ僕たち男子もそうバカではない。
相手の気持ちを鑑みたり、状況に即して的確に「何でもいい」を使い分けている。

でもここからが問題。
男の「何でもいい」は、残念ながらせいぜい3~4個のバリエーションしかないのだ。
しかもあろうことか、「俺が今言った「何でもいい」という言葉の裏には実は巧妙な他意を孕ませているのだが、まぁどうせ誰も気付いていないだろう」なんて思ってしまっていること。

対して女子は20個くらいのバリエーションで「何でもいい」を使いこなしてくる。マジで怖い。

いくらレベル4のヤツが必殺技を繰り出そうとも、レベル20の足元に及ぶはずが無いのだ。
はじめから負け戦。脳みその構造からして負けた。人間ってホント不平等。

だからもう今日は不貞寝する。おやすみなさい。
 

―――それにしても、次の記事の内容が浮かばない。
まぁ、何でもいいか。