お金がほしい

お金がほしい

2020年10月をもって更新をストップします。永らくのご愛読ありがとうございました。

ともだちの彼女は美人でした

友達の彼女にはじめて会ったんです。めちゃくちゃ美人でした。
書きたい事実はそれだけだし、それ以上のことなんてないのだけれど、どうしてこうも物悲しい気分になってしまうのだろうか。

いやね。
飲み会の悪ノリで「おいお前、彼女ここに呼べよ!」みたいなダサすぎる煽りに乗じたY君が本当に彼女を呼びつけていたらしく、1時間後にしれっとログイン。
なんか目大きいし鼻高いしフワフワしてるしなんだこの娘は。ひょっとして天使ですか。


童貞の弊害だろうか。最近どうにも通りすがる女性が全員綺麗に見えて仕方がない。ひょっとしてここは桃源郷ですか。
セントフォース所属の女子アナとか女神クラス。
彼女たちはアレだよね、サキュバスよろしく身体から聖なるオーラみたいなやつを発しているよね。僕も魔法使い(30歳)になったらはやく透視能力を手に入れたいものだ。

とはいえ最近、パーパーあいなぷぅに対しても「悪くないな」とか思い始めているのでかなり重症。だれか助けてくれ。


友達の彼女の話に戻る。戻りたくはない。

聞くところによると、ふたりはとても仲が良いらしくて、普段から一緒にお風呂に入るのだとか。
あと、彼女さん。歯科衛生士らしいです。
ちなみに最近の彼女さんは、赤ちゃんがほしいとか言っているそうです。


なにそれ。
どういう徳を積んだらそんな幸せな会話できんの。前世で惑星でも救ったんか。僕のばあいは人生が詰んでいる。笑えない。
あぁ神よ。もう通りすがるたびに自販機の釣り銭口を覗く癖は直します。なのでどうぞおひとつ、決してわがままは言いませんので、フワフワでモチモチでエチエチな彼女を僕に恵んでください。

 

不公平こそが人生の醍醐味であろうか。
せめてイチャラブしたまま爆発したかった。
もう僕にそんな耐性はありません。

彼らはまるで、コーヒーの底で溶け残った砂糖のようだ。
僕ならば真っ先に溶けてしまう。そして苦く頽廃的な世界を漂い続ける。
しかし彼らは結束が強い。誰も見えない奥の奥まで沈んでゆき、誰にも邪魔されることなくイチャコライフを終えるのである。

 


終電を逃さぬよう僕が帰ろうとすると「俺たちも行こうか」と2人も席を立った。
おいおい嘘だろ。冗談はその繋いだ手だけにしておくれ。

彼女さんは見た目どおり良い人なので、人見知りな僕にも話しかけてくれた。
しかし、見つめあうと素直にお喋りできない系男子代表として選出経験のある僕が、まともに会話できないことなど火を見るよりも明らか。

「ごめんね、男子ウケの悪い髪形で!」にどう返して良いのか分からず、「そんなことないよ」などと当たり障りのない返答ののち沈黙。そうだ、身投げしよう。
そもそもショートカットが男子ウケ悪いとかはじめて聞いたわ。ソース出せよ、ソース。


揺れる電車。
混雑した車内で、会話のない3人が気まずさを隠し切れずに立っている。

居酒屋の帰り際、仲間内から「おい、2人を邪魔してやるなよ!」と揶揄されながら3人で店を後にしたわけだが、むしろ僕は被害者である。
僕だってこんな状況を望んだわけじゃない。

あぁ神よ、これはどういう類の試練ですか。これを乗り越えた先に希望はありますか。


「じゃ、次は披露宴で会いましょう!」
酩酊した脳みそでようやく思いついた別れ文句に、無事愛想笑いをいただいたところで、僕は振り返ることなくホームの階段めがけて一目散に駆けていった。逃げたのである。

 

後日、Y君から「彼女、お前ともうちょっとお話ししたかったみたいよ」と言われた。
なんだか無性にコーヒーが飲みたくなった。