seven oopsのニューアルバム「songs for...」を聴いた感想
当ブログ内で、さんざんセブンウップスを聴いているとか売れてほしいとか言っておきながら新譜が出ても素知らぬふりをするのはどうかと思ったので、ここいらで触れておきます。
今回記事にしたのは、ボーカルのNANAEさんがこのアルバムに関してどうやらエゴサしているらしいので、その最中に偶然このブログを見つけ、そして自身のTwitterで拡散し、そこから流入してくる層でアクセス数が伸びて僕はウハウハ。という素晴らしい結果となることを見越した布石。
いや、それを望むならリリース直後に記事にしろよ、っていう話なんだけど、ちょうど1ヶ月くらい経ったほうが曲も覚えているし印象も定着してくるし、内容の厚さを考えると妥当とも思う。
まぁ。
とはいえ僕は音楽のプロフェッショナルでもなければ楽器に精通しているわけでもないし、というかそもそも彼らの熱烈なファンというわけではないので、少々穿った、というより素人が客観的に捉えた印象でしか発信できないんだけど。
ともあれ3ピースバンドのseven oopsが11月7日にニューアルバムをリリースしたので、1人でも多くこのバンドに興味を持ってもらうべく奮闘する所存である。
来年はアルバムツアーが始まるそうなので、足を運んでみるのもいいと思う。僕はまだ行ったことないけど。
前置きが長くなりました。
結論から申し上げると、まずはじめに彼ら(彼女ら?)の新曲をはじめてきいたとき、正直なところ「ま、こんなもんか」という塩辛い感想を抱いた。
アルバムが発売される少し前にYouTubeにて「この島で」という曲がアップロードされていたのだが、
たしかに沖縄出身のバンドらしさというか、三線の音を使ったオリジナリティは見えたものの曲やメロに対しての印象は「これまで通りだな」であった。
何年間もずっと聴いていたわけだから、「これまで通り」という印象はマイナスではないにしろ、3ピース体制に変わったのだから何かしら変化があると思っていた。むしろ変化しないとダメだと思っていた。
そんなところに、「この島で」というミディアムバラードのMVを観て、今回も同じテイストなんだろうな、と落胆してしまった。
落胆、という表現には少々語弊があるかもしれない。
けれども5年前、女の子をストーリーの主軸に置いた歌詞でデビューし、そこから大きく路線変更することなく前作「セツナエモーション」では売上的に振るわなかった現状に鑑みても、そしてメンバー全員が30代に突入したことを踏まえても、なによりギターのMICHIRUが脱退して3ピース体制になったことから否応なく従来どおり続けられなくなった現実と対面したはずの3人が、先行シングルとして出したのがこの曲なんだろうかと。
そこに対しての疑問が拭えないままアルバム発売日を迎えた。
ところがどっこい!
あまり期待せずに、まずは新譜を一通り聴いてみたら、何これええやないの。
seven oops、やるやないの。
1曲目から挑戦しているやないの。そしてカッコいいやないの。
今回はベースのKEITAが全作詞作曲を手がけたということで、ベーシストらしい曲が多くてバンドサウンドファンとしては正直たまらん。
ラテン調の「夏のロマンティカ」も、はじめて男目線の曲に挑戦した「記憶」も、これまでのバンドの良さを保ちつつ確実に変化している。
女性ボーカルのバンドは日本に山ほどあれど、今日の2018年においてラテン調の曲をこんなにもかっこよく表現できる作曲センスと歌い手のいるバンドというのは珍しいと思う。
それ以外にも、全体的におしゃれなイメージを抱いた。
ナウでヤングでトレンディーな高校生が好んで聴くかというと、それは素直に首を縦にふれない自分がいる。
けれども20代前半の僕には強烈に刺さったし、これまでタブーだったはずのアダルティな歌詞にも挑戦していることから、全体的に少し上の世代が聴きたいと思うアルバムになっているように感じた。
とはいえ全て手放しで絶賛する気にもなれないのが、素人意見だが1曲目は意図が分からないというか、これまでと明らかに違うことは伝わってくるんだけど、このアルバムの1曲目にふさわしいかというとどうだろうか?という印象。
というのも、この曲の良さというのは5回聴いたあたりから分かってくる、いわばスルメ曲なので、新規にファンを獲得するにあたり少々分かりづらいのではないかと。
ストリーミング配信やダウンロードが主流になりアルバムを曲順どおりに聴かない層が増える中でも、やっぱり1曲目というのは本当に重要な立ち位置の曲だと思う。あとシメを飾るラストの曲も。
僕が最初に聴いた印象は「おっ! これまでと違うことに挑戦しているじゃないか!」というプラスの感情があったわけだが、正直それしか湧かなかった。
だからはじめてseven oopsの曲を聴く人たちや、興味を持った人たちがこのアルバムをCDショップかどこかで試聴したとき、1曲目の「東京」で強烈なインパクトを与えられるかというとちょっと厳しいんじゃないかと思ってしまう。
バンドというのは、会社や団体と同様にこれまで築き上げてきたイメージというものがある。
少なくともこれまでNARUTOのエンディング曲をはじめとしたアニメ主題歌を担うバンドとしてのイメージが多少なりともあった中で、今回、アルバムのジャケットがこれなのだが、
明らかにこれまでのテイストとは異なる大人な印象を打ち出そうとしていることから、新規にファンを獲得しようとしている、あるいはリスナーの幅を拡充しようとしていることが見てとれる。
けれども路線変更があからさますぎて、付いてこられない人も多かったのではないだろうか。
back numberは一貫して10代の若者をメインターゲットとした歌詞でブレイクした。
きゃりーぱみゅぱみゅも原宿系っていうの?よく知らないけど、そういった若い女の子のアイコン的立ち位置に滑り込むことで今の地位を確立した。
さて、ひるがえってseven oopsの新譜に関してだが、全体的な印象として最近のロックやポップスが好きな20~30代前半がターゲットとなっているように感じた。
けれどもその層では「東京」の良さにピンと来ない人が大半だと思う。ちょうど僕がそうだったように。
KEITAのセンスが際立ちすぎて、バンドとしても時期尚早だった気がするし、これまでのファンも戸惑うし、そういう意味で新規ファンを掴まえて離さないだけの力は、正直ないと思う。
曲自体はめちゃくちゃカッコいいんだけどさ。
なによりNANAEさんの声が可愛すぎるが故に、曲そのもののイメージと歌が乖離している気がする。これ多分日本だと椎名林檎くらいしか歌いこなせないわ。
個人的にこれが丁度いい塩梅というか、要するに一番好きな曲は「使い捨てのラブソング」なる社会風刺ソング。
NANAEさんの歌い方の新たな一面を感じることができたし、なによりベーシストらしいカッコいい曲調がたまらん。ちゅき。
まぁ、とはいっても「東京」が新譜のイメージを損なうかというと決してそんなことはなく、むしろ「これまでと違う感」が如実なぶん総括的な立ち位置にあるといってもいいかもしれない。
アルバムを通して聴くと違和感があるのは、どちからというとラストを飾る「この島で」のほうだった。
この曲がこのアルバムに適合しているのか。
たしかに最後の曲は一般的に王道のバラードで終わることが多いし、沖縄出身バンドとしての色も十二分に出ているのだが、この挑戦に溢れるアルバムを締めくくるに本当にふさわしい曲なのかと。
前作「セツナエモーション」では、発売当時から模索している雰囲気というか、後にこれは「過渡期の作品」として扱われるのだろうな、とは思っていた。
けれどもアルバムラストの表題曲「セツナエモーション」では、これからこのバンドがもっと成長していくような兆しをたしかに感じ取ることができた。
だから今回、僕の期待が大きすぎたことも否めないが、ラストがこれってどうなのさと。どうしてもその感情が拭えないままだった。
が、この前webインタビューを読んで理解した。
このアルバムで最初にできた曲は、最後に収録した「この島で」という曲なんです。曲自体は去年からあって。MICHIRUが卒業する前にどうしても沖縄への想いを書いた曲を4人で演奏したかったんです。MICHIRUは「三線を使った曲をやりたい」と言っていたんですけど、KEITAは「まだやりたいことがあるから、もうちょっと待って欲しい」という意見で。それで、そういう曲は今までなかったんです。
3rdアルバムを出して、いよいよそういう曲を作ろうかというタイミングでMICHIRUが卒業を発表しました。だから最後にみんなで歌おうと、KEITAがこの曲を作ってくれたんです。そして、今作の制作が決まった時にKEITAが「この曲をアルバムの最後に入れたい」と。これを最後にしたら1曲目は「東京」にしたいというKEITAのアイディアで、曲はまだなかったんですけど、タイトルから決めて、制作が始まりましたね。
seven oops「3人でも格好良い作品と思って欲しい」NANAEが語る新たな挑戦
納得はしていないものの、この曲が彼らの中でどういう立ち位置にあるのか、というのは理解した。
おそらく今回は「新体制のseven oops第一弾アルバム!」というより「サヨナラこれまでの7!!」的な意味合いのほうが強いのだろう。
とはいえ、このアルバムをしてMVが「この島で」だけというのはもったいない気がしてならない。
だってアルバムのイメージ色は全然違うし、これでは新参者にとって「この島で」がアルバムのハイライト的な立ち位置にあるかのように受け止められてしまう。
7!!改めseven oopsのハイライトであっても、このアルバムのハイライトではない。そこは間違ってはいけない。
徳間ジャパンがこの曲を売りにしたいのは分かるが、もっと尖った面白いものも提示していかないと、昨今のガラパゴス化が進んだ(≒「使い捨てのラブソング」が横溢した)音楽業界ではやっぱり売れないぜ。
せっかく個性のある粒揃いのアルバムなのに、その色を打ち出さないのは本当にもったいない。
というわけで前半ベタ褒め後半失速気味の感想となってしまったが、個人的には他人にオススメできる内容であった。
前作「セツナエモーション」発売時は、おそらく「とりあえず聴いてみてもいいんじゃない?」という薦め方しかできなかったかもしれないが、今作は「いいから聴けって!」と言いたくなるアルバムだった。
だからもっと多くの人が1mmでも興味を持ってくれたら嬉しいなぁとは、やっぱり思う。