お金がほしい

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2020年10月をもって更新をストップします。永らくのご愛読ありがとうございました。

エレカシの映画を観たけども

最近にはじまったことではないけれど、ミュージシャンやバンド、あるいはそのうちの一人に焦点を当てたドキュメント映画が昨今隆盛を極めている。

ラルクもやったしワンオクもやってたし、海外のほうではもうじきクイーンとクラプトンの映画が公開されるようで、近くでも公開されたら観に行こうかなぁなんて思っているんだけども。


そんな流行に乗じてかあるいは否か、エレカシも2013年にドキュメント映画を公開していた。
ちょうどフロントマンの宮本氏が外リンパ瘻を患って活動休止したのち、日比谷野外音楽堂のコンサートをもって完全復活を遂げるまでの練習風景をインタビューなどを交えて編集したものである。

前々からいずれ観たいなぁとは思っていたんだけど、5千円近く出して購入するのもなぁなんて尻込みしていたところ、存外に安く手に入る機会があったので早速購入し視聴。
映画版とは異なり、ラストにリハーサルを含めた未公開映像が数十分ほど追加されていて、2時間近くの大作であった。


まぁこれは僕個人の意見なのでスルーしてほしいんだけど、正直に感想を述べるとするならば買うほどのものじゃなかった。
マジで5千円出さなくて良かったと思った。

ファンとして内容はまぁそれなりに良かったんだけど、なにせ昔の映像とインタビューが多い。
それもインタビューというのがメンバーのインタビューではなく(もちろんメンバーのインタビューもあるが)デビュー当時ののエレカシを知る著名人の方々の感想をただ聞くだけという、まぁ何ともやりきれない感じの内容。

デビュー当時から今のエレカシまでを追うのだから当然昔の映像が多くなるのはしょうがないけれど、でもなんだかなぁ。いまひとつという感じ。


まぁ、たとえば明日突然YouTubeが閉鎖されて昔の映像が一切観られなくなったとしても、このDVDがあるから俺は大丈夫さ!みたいな、個人的にはそういう立ち位置にある気がする。

とはいえ昔の尖っていた頃の映像というのはやっぱり面白い。

客に向かって「うるせえバカヤロウ」はあまりにも有名だし、その他「ほら、帰っていいよ」とかなかなかシビれる。ファンじゃないときその場にいたら多分問答無用で嫌いになってるだろうけど。
下北のシェルターでは「クソみたいなバンドデビューさせて俺たちをクビにしてんじゃねぇバカヤロウ」と元いたレコード会社の方針にぶち切れつつ、可愛い声で「はぁ、ぼくのレコード会社いつになったら決まるんだろう」とつぶやいたのち新曲として初めて披露された「悲しみの果て」とか、それなりに見所は多い。


でも、やっぱり僕が求めていたのとは少し違った。
というのも、エレカシの映像商品としてもうひとつ「扉の向こう」というフィルムがあるのだが、これが最高に素晴らしい内容であるため上述の映画に対しても過剰に期待が大きかったのかもしれない。


「扉の向こう」とは、今年「万引き家族」でパルムドールを受賞した是枝裕和監督が2004年にエレカシのレコーディング風景に密着したドキュメント映画で、それはもうすさまじい内容。
90年代後半に「今宵の月のように」が大ヒットして一躍有名になったエレカシが中年になって新たに「バンド」として再スタートを切ろうとしているときの、その苦悩と葛藤を包み隠さず表出した作品で、きっとこの作品を観た人ならば誰しも「歴史」という曲と「扉」というアルバムが大好きになること間違いなし。

YouTubeにもあがっているけどあれはTV放送バージョンなので半分くらい内容が違っている。
そのため映像商品よりも圧倒的に感動は薄れる。

だからまだ歌詞のついていない「歴史」の演奏風景で宮本氏がメンバーに向かって怒鳴っているのも、「なんてヒドいヤツなんだ...」と見えてしまうのも致し方なし。
ちょうどここにあるから一応載せておく。

www.youtube.comでも映像版を観ればそんな感想を抱く人はきっといなくなるだろう。


なぜなら、宮本氏が曲に対してどれほど心血を注いでいるか、その熱量がイヤというほど伝わってくるからだ。
当時落ち目のバンドマンが高熱をおしてまでレコーディングに勤しみ、ノート何冊分も歌詞の断片となる文字を書いては消し、消してはまた書きを繰り返すその姿には思わず圧倒される。

中年に差しかかった宮本氏が、若さで乗り切れなくなったエレカシが、バンドとしてもうひとつ、世間に対して「どうだ!」と胸を張って言うための血の滲むような努力がこの映画には収められている。

 

・・・まぁ、理不尽だけどね。

 


だが一方2013年公開の映画はというと、その苦悩があまり見られない。

宮本氏は病気を機にタバコをやめたので声が絶好調。
一方のバンドメンバーは宮本氏の耳を気にしているのかガツンとした手応えのないようす。

それに苛立つ宮本。押し黙るメンバー。
ファンにとってはあまりに馴染みの深い光景なので何とも思わないが、それでもあまり気持ちのいいものではない。

宮本氏が単純に不満をぶちまけるだけのシーンは20分ほどあるが、宮本氏が曲に対して苦悩を見せるシーンはほとんどない。
僕はその思い入れの強さも知っているし、宮本氏が檄を飛ばすことで演奏の質が格段に上がることも重々分かっている。

現に作中の新曲「めんどくせい」をフルで演奏する4人の姿には鬼気迫るものがあって目が離せなくなった。


けれどもこれではただの一人ブラック企業である。
メンバーに対して怒鳴り散らす「独裁者宮本」をカメラで追っているように思えてくる。

それはそれでエレカシの真実であるし、ライブに向かうその執念にも似た心意気には畏敬の念を払わざるをえないのだが、個人的にはいまひとつ。

あとニューアルバムのプロデューサーである村山潤さんには星ひとつ。

 

・・・村山☆潤ってなんだよ。
苗字と名前の間に星が入るのってつのだ☆ひろくらいしかいないと思っていたのに。

いずれにしてもどうしてだろうか、この星がちょっとむかつく。