お金がほしい

お金がほしい

2020年10月をもって更新をストップします。永らくのご愛読ありがとうございました。

コンサートにおけるファンのモラルについて考えてみた

おととい僕は、友人と一緒にB'zのライブに足を運んだ。(以下ライブのネタバレあるので注意!)
彼らを生で見るのは実に3回目であり、それは一見多いように感じるかもしれないが、30年という彼らのキャリアと比較するとたった3回なんて夜空に散らばる星屑みたいなものである。


現在B'zはデビュー30周年を記念した全国ツアーを開催しており、ちょうど僕の住む地元に訪れるというので使命感にも似た何かに突き動かされてチケットを取った。
まぁチケットを取ったのは僕じゃなくて友達なんだけど。


コンサートの1週間前、チケットをコンビニで発券すると「当日引換券」なるものが出てきたらしい。
つまりその日にならないと、もっと言えば会場に入らなければ席が分からないというシステムだった。

これが転売対策のためなのかB'zなりのサプライズなのかはよく分からないけれど、かくして当日引換券を係員に見せると返されたチケットには「アリーナ席」の文字が。


かれこれ10回以上ライブやコンサートに足を運んでいるが、初めてのアリーナ席だった。
いつもスタンド席から見下ろすような感じで、それはそれで素敵な光景が見れていいんだけど、間違いなく銀テを手にするのはアリーナ席だけだしDVD化されたときに映るのもアリーナ席の観客だし。

というわけで若干の羨望があったから素直に嬉しかった。


まぁアリーナの中でも真ん中よりは後ろのほうで、かなりの良席というわけにもいかなかったがそれはやむなし。
およそ開演の1時間前に入場したので、あれこれと駄弁りながらただ「その時」を待っていた。


・・・僕たちはこの時、まさかあんなことが起きるなんて思ってもいなかった。


そしてほぼ定刻どおり、映像による演出が始まったと思ったら最初の曲は「ultra soul
日本人なら誰もが知っている、だからこそファンは飽き始めている例の曲で開幕した。


これはご存知ノリの良い曲なので、観客は拳を突き上げたり手拍子をしたりして盛り上がった。
稲葉さんもそれを煽るように観客を誘導していた。

するとふと、僕の視界には珍妙な動きをした人間が入り込んできた。

それは僕から見て右斜め前にいた50代くらいのおばさんで、他の観客とは違う動きで曲にノっていた。
けれど僕はまだこのとき「変わったノり方をする人だなぁ」くらいにしか思っていなかった。


次の曲は「BLOWIN'」で、CD音源でも久しく聴いていなかったから無性に懐かしい感じがした。

だがそんな感傷に浸っていると、またも右斜め前のおばさんが目に入る。
ミドルテンポの同曲はロック色の強い曲とはまた別のノリの良さがあり、するとやはり例のおばさんが踊りだす。

このときは「小太りなのにキレッキレだなぁ...」と感心しながらも、しかし心中では怒りボルテージが徐々に上昇しはじめていた。


MCほぼなしで3曲目。「ミエナイチカラ」である。


そしてついに、この曲で事件が起きてしまった。
この曲もノリやすい曲である。軽やかなビートに合わせてみなが手拍子をするなか、右斜め前のおばさんはイカれたロボットみたいに謎の動きを終始繰り返していた。


「なんなんだコイツ・・・」


そう思った矢先、なんとその隣にいたもうひとりのおばさんも何かに操られたかのように奇妙な動きを始めた。

僕は唖然とした。

 

そして僕の目は最高にカッコいい稲葉さんと松本さん、毎度お馴染みのクールなサポメンを差し置いて、もうそのおばさん2人組しか映さなくなってしまった。


大勢の観衆の中で、ただその2人だけが謎のコンテンポラリーダンスを繰り広げている。
1人は前衛的な盆踊り風に、もう1人は怪しい教祖に魅せられた従臣のごとく祈りを捧げるようなポーズで、ここまで来ると曲にノっているというより自分に酔っていた。

いや怖ぇよ。色々な意味で怖い。


いったいこの人たちはなんなんだ・・・。
何をしたいんだろうか、何をするためにこの場所に来たのだろうか。

疑念は尽きない。


そして5曲終わったところでMCが入り、心優しい稲葉さんがこう言った。
「それでは皆さん、思い思いに楽しんでいってください」


これがいけなかった。
ただでさえたがが外れていたおばさん衆のモーションに拍車がかかり、気持ち悪さと気味の悪さと鬱陶しさが逓増した。

おまけに後ろのやつは名曲「光芒」で歌い始めるし、いやいやふざけんなって。

 

これまでスタンド席ではあまり気にならなかったことも、アリーナ席では色々と気に障りはじめた。

スタンド席は階段状になっているので、前の人の身長にステージの光景が阻まれることはほとんどない。
それに隣との距離は近いものの前後は割と空間があるので、後ろの人が歌っていたり前の人が変な動きをしていても気になることが少ない。


しかしアリーナ席では身長の関係でステージが全く見えないこともあるだろうし、風通しが悪いから汗臭くなるし、前の人がパーマ&ロン毛の場合拳を突き上げるとその毛を巻き込んでしまうケースもある。
はじめてアリーナ席になって、ライブ観戦のモラルについてちゃんと考えた。

 

そういえば以前山下達郎さんがラジオ内のリスナーから寄せられた質問に答えるコーナーで「コンサートのとき一緒に歌うのはダメですか?」というファックスが来たときこう答えていた。

「いやいやダメでしょ。あなたの歌を聴きに来ているわけではないのだから」

影響力のある人がこういうことを言ってくれるのは嬉しい。

けれども海外では「バラード曲=みんなで大合唱する曲」というイメージがある。
どちらをスタンダードとして据え置くか、仮にどちらかを規範としたところで逸脱する輩は絶対に現れるけど、いやはや集団行動ってのは難しいですね。

 


でも今回ひとつ思ったのは、稲葉さんが校長先生なら絶対みんな話を真面目に聞くんだろうな、ということだった。