お金がほしい

お金がほしい

2020年10月をもって更新をストップします。永らくのご愛読ありがとうございました。

自転車のライトはどうやら気分屋らしく

僕は毎日、基本的に毎日自転車を利用している。
自宅から最寄駅までは4km以上あり、駅付近に無料の駐輪場があることや、逆に無料の駐車場がないことから仕方なく自転車で駅まで通っている。

本当なら、そりゃ車のほうが楽に決まっている。
雨が降ってもカッパなんて着なくていいし、靴は濡れないし、前髪はクルクルにならないし。

でも背に腹は代えられない。
僕にとってもっとも重要視すべき点はそう、お金の問題だ。

なにせブログのタイトルにまでしているんだもの。雨に濡れることとお金を取られることのどちらかを選択せよと言われたら間違いなく豪雨の中に突っ込む自信がある。

だから結局こうやってブログに愚痴を連ねることくらいしかできないんだけども、そんな我が愛用の自転車が最近ご機嫌斜めなのである。
いや、正確に言うならば「気分屋」と表記すべきか。

調子がいいときと悪いときの差が激しい。
ロック歌手の喉並に温度差がある。


というのも、僕の自転車は通称ママチャリと呼ばれる銀色ブリヂストンのアルベルトで、中高生が通学に使用している一般的なものを想像してもらえれば分かりやすいと思う。
だから重量がヘヴィー級なのと変速ギアが3つしか付いていないことを除けば割と上物である。

それもそのはず、通学用自転車とは速く走ることよりも長く使うことに重点を置いた作りのため、頑丈でサビにくく保険や保証もバッチリついている。
おまけに僕にとってはかれこれ10年来の付き合いになるので、信頼関係も申し分ない。

・・・まぁ、1台目のママチャリはあえなく盗まれたんだけどね。


とはいえ2台目もとい2代目の彼も今必死に頑張ってくれている。
まだ2年半近くしか乗っていないけど、現状僕たちの関係は悪くない。

だがそんな昨今。
まだ夕方の6時が暗かった数ヶ月前から、彼の様子がたまにおかしくなるのだ。


その症状が現れるのは、後輪上部についている赤い反射ライト。テールライトとでもいうのかな。

最近のテールライトは高性能らしく、振動を感知するとチカチカと光る仕組みになっている。
ライトの上部には太陽光パネルが搭載されていて、昼間蓄えたエネルギーを夜の走行時に光として使用しているのだ。

だから自転車を購入する際、販売員のおっちゃんが「最近のライトはこれこれこういう性質があってですね...」という説明を聞いたときから、せっかくならそのタイプの自転車を買おうと決めていた。


そして購入から、程なく2年もの月日が過ぎた。

ちなみに電化製品の寿命は10年が目安だと聞く。
メーカーや製品一つ一つによって寿命は異なるが、それなりのモノを買えば基本5年は持つだろう。

一方の自転車も、平均的に10年が耐久年数だという。
もちろんその間にはタイヤの交換なりライトの交換なり色々と不備は出てくるだろうが、少しずつメンテナンスを重ねていけばかなり長い付き合いをすることも可能だろう。

だから2年なんてまだ序盤だ。
よって自転車そのものに問題はない。

だが最初に異常をきたしたのは、ライトであった。
後輪に括りつけられたその赤いライトが、1週間に5日ほど点灯しないのだ。


これはいけない。
何がいけないかって、1週間に2日はちゃんと点灯してしまうことである。

もし仮にテールライトがずっと点灯しなければ「あ、きっと壊れたか電池切れだな」と思って自転車屋さんにいけるんだけど、数日だけはしっかりチカチカと点滅してくれているのだ。

さらに自転車にも法律というものがあって、それは夜間のライト点灯についても当然記載があるんだけど、テールライトに関しては結構緩いんだよね。

そもそも僕が使っているのは赤い反射材の横にライトがついているタイプのものなので、反射材そのものはちゃんと機能している。
その横についているライトが点いたり点かなかったりするだけで、そこに関しては自衛にどれほど執心しているかによって千差万別だから、反射材がある時点で一応の条件はクリアしているわけだ。

だから自転車屋さんに行きづらい。

そのうえ数日しかない点滅デーになると、なんだかライトがとても愛らしく思えてしまうのだ。

僕はまだ電池切れじゃないんだぞ!と、まだまだやれるんだぞ!と訴えかけているようで、どうにも手放し難くなってしまう。

そのとき脳裏に流れるミュージックは中島みゆきの「ヘッドライト・テールライト

闇が世界を包み込む田舎の如法暗夜。
街灯も人影もなくて、ただ草むらから聞こえる虫の鳴き声と前方を照らす白い光だけが五感に染み入る。そして人知れず僕の背後を守ってくれているのが、かの赤いライト。
なんと心強いことだろう。

そう、まさに「旅はまだ終わらない」だ。
彼との旅は、まだ終わらない。

 

 


・・・なんてこともいつまでも言ってられないので、先日自転車屋さんに行ってきた。

先ほど自衛と書いたが、ライトというのは自分のためではなく他人のためにある。
特に車のウィンカーとか、あれはどう考えても他人のためにあるんだから曲がる直前で出されても困るんだな。

そういうわけで、これから夜道を走ることも多いためちゃんと毎日点くようにしてもらいに行った。

すると自転車屋のおっちゃんは、新しいライトを持ってくるのではなく徐ろにネジを外すとそのライトを退かし、鉄の棒か何かで裏側を擦りはじめた。
そして数秒間擦ったかと思うと、また同じライトを自転車後部に取り付けた。

「いやいやいや、そんなんで直るはずが...」と思っていたらなんとビックリ、点くんですねこれが。
てっきり電池切れかと思っていたのに、おっちゃん曰く単純な接触不良とのこと。

ははは。
なるほどなるほど。どういうことでしょうかちょっとよく分かりませんでした。

いまいち釈然としないけど、長く悩んだ割にあっさりと解決してしまったこの問題。
さてお金を払って帰りますか、と店主に「いくらですか」と訊くやいなや「いや、要らんよ」とだけ返ってきた。

しゃがれ声で発せられたこの男気溢れるセリフに思わずノックアウト。
財布の紐を緩めない代わりに頬が緩んでしまった。

カッコよすぎだろ。

とりあえずグーグルマップで星5をつけときました。

 

それから僕は、乗りなれた相棒に跨って帰路についた。