お金がほしい

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先に謝っておきます。ごめんなさい。

台湾旅行記 狂乱のホテル篇 1

それぞれのホームステイが終了した翌夜、僕たち台湾旅行中の学生はホテルでまったりと過ごしていた。

ホームステイはたしかに貴重な経験ができたのでタメにはなったが、やはり精神的にかなり疲弊した。
いくら親切にしてもらったとはいえ、言語の壁がある見ず知らずの家庭に一晩お世話になるというのはどうしても消耗する。

特にそれが社会経験の少ない高校生ならば尚更だ。


だからこんなことを言うと僕に良くしてくれた台湾の方々に失礼かもしれないが、ホームステイが終了したことで肩の荷が下りたように気持ちが楽になった。
そういうわけで、大きくて綺麗なベッドがあるホテルなんてゆったりまったりするしか選択肢は残されていなかったのである。

ちなみにホテルは2人部屋であるからして、僕ら男子4人は2人ずつに分かれてそれぞれの部屋に入った。
とはいっても部屋は隣同士なので、どちらかの部屋への行き来は容易だった。

そのため何か用事があったり話があったりすると、隣の部屋に押しかけてはくだを巻くように和気藹々と喋って自部屋に戻る、というような行動を何度か繰り返していた。


そしてそうこうしているうちに、時刻は夜の10時を回っていた。
僕と同室のクラスメイト(=以後「U原くん」)が隣の部屋に押し入って4人で会話していると、隣の部屋のK西くんが「そろそろシャワーを浴びる」と言いはじめた。


そのホテルのシャワールームは最近よくあるガラス張りタイプのお洒落なデザインで、しかし当時にしてはもの珍しかったため「すげぇ、透明じゃん!」「覗き放題だな!」なんて言ってはケラケラと笑っていたものだった。

 

http://mbp-kobe.com/elements/profiles/revontulet/images/cache/image_19508_400_0.jpg

見た目はこんな感じ。

まぁ当然ながら、ベッドのある部屋とシャワールームとの間には扉が1枚あるため、すんなりと覗くことができるわけではない。

同室の人物と相当近しい間柄だったり気が置けないような親密度があれば、チラッと覗いても「ちょっとお前! なに覗いてんだよっ!」くらいで終わるのだが、そうでもない場合。
例えば今回の旅行のように、偶然旅行の行き先が同じになったクラスメイト、くらいの距離感だったらば、相手のプライバシーを著しく侵害する「風呂覗き」という行為はたいていの場合御法度である。

モラル的にというか、人間的にアウトである。


なのでもし僕たちが普通の人間だったならば、K西くんが「そろそろシャワー浴びる」と言った時点で「じゃあ俺たちも自分たちの部屋に戻りますわ。どうせなら俺たちもシャワー浴びちゃおうか?」なんて会話にシフトするのがセオリー。

でも僕とU原くんは、誠に遺憾ながらちょっと社会の範疇から逸脱したような人間なのである。
おまけにお互いひどく疲れていたため、正常な判断ができなかったのかもしれない。

そのためK西くんが「シャワー」というキラーワードを発した瞬間、すぐさま僕ら2人の脳裏には「覗き」という不埒な単語がこびり付いていた。

 

もちろん、僕だって心の底から「グヘヘッ、覗いてやるぜ!」なんて息巻いていたわけじゃない。
いわゆる天使と悪魔が熾烈な争いを繰り広げる、みたいなイメージで僕の胸裏を搔き乱していた。


悪魔は言う。

「ヒ~ッヒッヒッ、今からシャワー浴びるなんて覗きの絶好のチャンスじゃないか! こんな機会を逃してたまるかよ!」

・・・うわーヒドい言い草だわ。女ならまだしも男のシャワー覗いて何がしたいんだよ、自分。

「なりませんわ!」

おっ、ここで天使登場! 言ってやれ言ってやれ! 男の裸が見たいなんて趣味が悪いぞと言ってやれ!

「ダメです、彼は大切な一人の友人なのですよ。これまで培ってきた友情を自ら踏みにじるような行為はしてはなりません!」

いや~さすが天使。情に訴えるとはなかなかやりますなぁ。
こりゃ悪魔さんも相当堪えるんじゃないの?

「おいおい、俺とアイツはただの覗きごときで壊れる程度の友情しかないのか? 大切な友人なんだったらよぉ、そのくらい笑って許せるような間柄が本当の友達というんじゃないのか?」

「!」

・・・・・・あれ?
なにやら天使の様子がおかしい。

「・・・そう、かもしれませんね。ごめんなさい、私が間違っていましたわ」

うっわ、天使弱っ! あっさり負けを認めすぎだろ。

いや、なに?その「自分の非を認めるのが究極の美学」みたいな考えとかマジで要らないから!


でももう遅い。
僕の心は固い決意という名の煩悩に支配された後だった。

そしてなにより、男という生き物は悪知恵に関しては群を抜いて発想力豊かになる。
おまけにその悪知恵が結束したときの力というのは計り知れない。

 

僕とU原くんは特別何を相談するでもなく、ある共通の目的の元で行動を開始した。

そう、それは・・・

 

 

気付かれぬようカードキーを1枚盗む

というものだった。