「痩せてるね」という呪いの言葉
「痩せてるね」という言葉。
このセリフを誰かに向けたとき、それはきっと対象を褒めようとしているに違いない。
他意なんてない、純粋な褒章の美辞麗句。
そういう認識が一般的であるから、ガリガリの僕なんてしょっちゅうこの言葉をもって異性から形容されることが多い。
いや、だからといってイヤだとか金輪際やめてほしいとか、そういったマイナスのイメージこそ持たないのだが、しかし世の中的にはそうでないことが多い。
というのも、女子に向かって「痩せてるね」と評するのは冒涜と同義であるということを最近知ったのだ。
かつて知り合いの女子高生(決していかがわしい関係ではない←ココ重要)と話すきっかけがあったのだが、その時どういった話の流れか忘れたが「痩せてるね」」と言われることについての不満をあちらが滔々と僕に語ってきたことがあった。
彼女は男子目線から言うと背も低くなく(165くらい)スラッとした体形で、運動部所属ということもあって普通に痩せている印象だった。
いやむしろ外見の印象を訊ねられたら真っ先に「痩せてる」としか答えられないくらいの、本当に痩せているだけの女子だった。
いやこの表現最低だわ。こちら最低目線よりお届けしております。ご迷惑をおかけします。
しかしそんな痩せていること以外突出した特徴のない彼女いわく「痩せてるね」と言われることが非常に不愉快だという。
でも僕からすればどこからどう見ても痩せていた彼女であり、しかも女子というのは食事制限までして痩せたがる人種なので僕にはその理由が分からず、そのワケを問いただすことにした。
すると彼女は一言
だってお腹周りの肉が凄いんですよ!
と言い放った。
どうやら服の上から見えるところはそれなりに痩せている自覚はありそう言ってくれるのは素直に嬉しいらしいのだが、服に隠れた腹部や臀部から腿にかけての肉付きが当人的に許容範囲を大きく逸脱しているらしい。
だからそんな事情など何も知らない人が「痩せてるね」というと「はぁ!? てめぇ私のこと何にも知らねぇくせに痩せてるとか抜かしてんじゃねぇぞオラァ。なんだよ嫌味か嫌味なのかよ」と捉えてしまう、とのこと。
まぁ理屈は分かるがめんどくせぇ。
言いたいことは分かるし共感もできるがめんどくせぇ。
でも褒めてるつもりが相手を傷つけていたというのは一番タチが悪いので、この事実は知っておいて損はないと思う。
とはいえ全女子がこのような思考をお持ちかどうかは分からないが、ともかく思春期女子をつかまえて迂闊にも「痩せてるね」と口走るのは御法度。
こっちが「これで好感度グイグイUPだぜぃ!」と思っている一方相手は「死ね」と思ってます。やだ辛い。
でもね、じゃあどのように女性を褒めたらいいのさなんて疑問が湧き上がるわけだけど、全然分からんよね。
自分の容姿に自信がない相手に向かって「可愛い」って言うと「死ね」って思われるし、何気なく「髪が綺麗だね」とか言うと「キモッ」ってどん引かれる。
こっちが本気で思って口にしていたらその分だけ相手がダメージを負うという現実の惨さよ。
結局年増の女性に「お若いですね」って言うことくらいしか無難な線は思い浮かばない。
だから「最近彼氏が冷たいんだけど」とか愚痴っているそこの女子高生さんは自分の行為にも目を向けてみてください。きっとすぐに解決策が見つかります。
あと最後にこれだけ言っておくけど、男子に向かって「痩せてるね」って言うのは全然褒め言葉じゃないからね。
別にイヤじゃないけど1㎜も嬉しくないし、褒められている気もしない。
そうだなぁ、男から「K-POPとか好きそうだよね」って言われるのとちょうど同じくらいの印象だと思ってくれていい。
というわけでもっと別の言葉で誉めそやしてくださいよろしくお願いします。