お金がほしい

お金がほしい

2020年10月をもって更新をストップします。永らくのご愛読ありがとうございました。

「趣味=睡眠」という人の深すぎる闇

僕が小学校の頃、巷では「プロフィール帳」なるものが流行っていた。

友達なら誰もが知っているはずの名前欄から血液型、趣味や特技についての項目が全部で20種類ほど存在している小さな紙切れ。
就活経験のある人なら吐き気を催すほど、それはそれはもうご丁寧に裏まで項目欄がビッシリの精神拷問器具。

よくあんな面倒臭いものに時間を費やしていたものだと我ながら全く理解が及ばない。意味分からん。あの時間返してくれよ。

matome.naver.jp

とはいえ僕も男の端くれであるからして、わざわざその「プロフィール帳」なるものを自分で購入したことは一度たりともない。
姉やその友達、それから僕のクラスメイト(主に女子、というか女子だけ)が百均か雑貨屋で買ってきたようなチープすぎるその紙面に、僕は毎度同じようなプロフィールを羅列していった。

だいたいプロフィールなんて戸籍抄本なんかと同じでそう簡単に変えることができるわけない。血液型も得意科目も嫌いな食べ物も、ふとした拍子に突然変異でも起きない限りぜんぶ同じ。マジでつまらん。

ちなみに僕は「ハマっていること」の欄に「落とし穴」と書いていました。マジでつまらん。

 


まぁこれについては他人様のそんな情報を収集して何が楽しかったのだろうという疑問も大いにあるが今は一旦胸のうちに秘めておくとして、僕が今回言いたいのは「趣味」の欄。

さすがの僕でも小学校のとき趣味欄に「寝ること」とは書いていなかったが、年を追うにつれ段々と周囲に「趣味=寝ること」と謳う人が増えてきた気がするのだ。

 

それは例えば高校や大学なんかの外国語授業で「趣味」について記述・発表をするとき。

「音楽鑑賞」「読書」「スポーツ」なんかが圧倒的多数を占める中、必ず1人はこういうヤツが現れる。

 

趣味=睡眠(もしくは人間観察)


まぁ、僕なんだけどね。


あ、話逸れるけど「趣味=音楽鑑賞」って書く人って本当にそこに書くレベルで音楽鑑賞してるのかしら。

音楽聴きながら料理作るってのは「料理」であって、音楽聴きながら電車に乗るのは「通学・通勤」であって、音楽聴きながら物思いに耽るのも「瞑想」という呼称が与えれている。

いや本当に偏見で申し訳ないんだけど、WalkmanとかiPodとか出てきたあたりから「音楽を聴きながら」ってのが普通になってきて、どうしてもそれ自体が目的になっていないんじゃないかという思いが拭えない。

レコードプレーヤーとか真空管アンプとかをわざわざ買って音楽を聴くというなら分かるんだけども、趣味に音楽鑑賞って書く人の80%くらいはほとんど別のことが本来の趣味にあたるのだと思っている。


話戻りまして「趣味=睡眠」の話題。
といっても上述した「音楽鑑賞」と共通点があり、それは「本当の趣味」を隠している疑惑があるという点だ。


というのも、(実際僕がそうなのだが)こういうことを書く人というのは「本当に無趣味」か「実は人に言えない/言いたくない趣味がある」のどちらかに属するものだと考えられる。これは断言しても良いかもしれない。


だって考えてみてほしい。
「睡眠ってなんて楽しいんだ!」と感じた経験をお持ちの方がこの世界にどのくらいいるだろうか。

たしかに寝る瞬間や二度寝のタイミングで訪れるあの意識が朦朧としたモワーンという瞬間はたまらなく愛おしい。やべぇちょっと眠くなってきた。

そして多かれ少なかれ睡眠は「睡眠欲」として人間の営みに必要不可欠なものである。「趣味=食事」や「趣味=自家発電」が一般的に認められているわが国において「睡眠」だけ例外というのはおかしいという意見もあるだろう。ないか。ないな。


でもさ、睡眠時って意識ないでしょ。母さんに「寝てるとき寒くなかった?」とか訊かれても憶えてねぇんだよ考えりゃ分かるだろうがぃ。


しかしこんなことを言っている僕も昔は「趣味=睡眠」と書いていた。
その理由は簡単で、本当に他に何もしていなかったからというただその1点に尽きる。

中学や高校生の時なんて朝起きて学校行って部活終わって帰ったら夜の7時。そこから飯食って課題こなして風呂に歯磨きなんてしてりゃ眠くなってくる。

そして僕の場合、休日は平均して昼の12時起きが常だった。
そこから飯を食いテレビを観ながらボーッと呆けているうちに夕方になり飯食ってクソして寝る。その繰り返し。

だから僕はどうしても趣味欄に睡眠と書くほか無かった。怠惰で自堕落な僕を神様どうか許しておくれ。趣味欄に「部活動の長距離走」だなんて死んでも書きたくなかったんだよホントに。

さきほど失礼なことを申したが、「音楽鑑賞」と書く方もこれに近いかもしれない。本当に好きなことは別にあるがそれをどうしても書きたくないとき、逃げた先にあるのが「音楽鑑賞」という安心感と普遍性に満ちた回答である。

例えば普段ボカロ聞きながらVIPで安価出したりしている人は、趣味欄に表向き「音楽鑑賞」とでも書けば角が立たないし深く探られないし。そらみんな書くわ。

 

もし、音楽鑑賞ガチ勢の方がこの記事を読んで業腹だ!勘違いも甚だしい!とお怒りの場合は、今後「新人バンドの発掘」とか「FLACDSDの聞き分け」といったようにマニアックさを強調させてくれると嬉しい。

そもそも趣味というのは会話のきっかけでしかないので、趣味欄に「寝ること」とか書いてしまう人は「俺なかなか面白いでしょ?」と間違った方向に自己アピールしちゃう勘違い野郎だったりするわけで。

 


そしてそれから数年が経ち大学生になっても講義で似たような課題が出されたのだが、そこには僕以外にも「趣味=睡眠」と書く人がチラホラ現れた。

しかし実際彼らの話を聞いてみると、なるほどまったく分からん。

話せば話すほどおかしな方向に行ってしまう人や、秘密主義的に自分を頑なに出そうとしない不思議系、あるいは自虐ネタを言いながら泣きそうな顔で愛想笑いを浮かべるような変態しか、残念ながらそこにはいなかったのだ。


だから僕は思った。
彼らは絶対に裏で何かを極めているに違いないと。ただそれを人前に晒すのがイヤなだけじゃないのかと。

 

例えば毎日エロゲ三昧の人生を送っている人が「あなたの趣味はなんですか?」と訊かれたらどう答えるだろうか。

まぁ中には「エロゲです(キリッ」みたいな人もいるだろうが、たいていの人なら答えに詰まるだろう。

そして自分の生活を思い出すと、そこにはエロゲと同じくらい時間を使っているものがあったことに気づく。
それこそまさしく睡眠だ。

常日頃からエロゲ14時間、睡眠8時間、それ以外の時間で食事やシャワーを済ませていれば必然的に睡眠が趣味と答えざるを得ない。

そして何より「趣味は睡眠です」と言って怒る人はまずいない。そのうえ睡眠とは全人類が経験していることなので普遍性が著しく高く、絶対的な安心感がある。

しかも「趣味=睡眠」なんて常識的な範囲内で且つ常軌を逸していて面白い(と思える)。誰も本気にしない程度に、それでも形式上の課題はきちんとクリアできるのだ。

 

だからどうか皆さん、「睡眠が趣味」とかいう輩が目の前に現れたらそっとしておいてあげてください。

「なんて返してあげるのが良いのか?」と考えてくださる心優しい方もいらっしゃるかもしれませんが、「あはは、面白ーい!」とか「休日は昼過ぎまでがデフォかな?」とかテキトーに流してあげればよいのです。

そもそも自分の趣味を知られないための盾として秘技「睡眠」を召喚しているわけなので、深く触れないのがその人のためでもある。そして、どうせ深堀したところで話も盛りあがるわけがないので、お互い火傷しないように触らないのがベストかなと。

 


ちなみにこういうことを書く人はiPhoneのロック画面をあえて初期設定のままにしていたり、LINEのアイコン画像がなかったりする。

僕はそういう人を「闇が深い」と評している。