お金がほしい

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2020年10月をもって更新をストップします。永らくのご愛読ありがとうございました。

芦田愛菜が怖い

芦田愛菜、いいや、芦田愛菜さん、否、芦田愛菜様が怖い。末恐ろしくて仕方が無い。

愛菜ちゃんいつの間にこんなかわいくなったの!?」「愛菜ちゃん声低くなって大人って感じ!」
世間一般でこう評されていることは知っている。そして否定もしない。

でも僕は申し訳ないがこの意見に賛同することはできない。
中学受験で名門校入学が決まってから最近よくテレビで見かけるようになったが、現状僕はテレビの前で太刀打ちできずにいる。まったく刃が立たない。為す術がない。

彼女の姿をテレビで見ると、それはもう文字通り虫唾やら悪寒やらが体中にほとばしり、震える手を何とか鎮めながら脱兎のごとくチャンネルを変えてしまうのだ。

とはいえ誤認を正すとすれば、僕は彼女のことが断じて嫌いというわけではない。

たしかにマルモリの歌でテレビに出ていたときは世間一般に流されて「芦田愛菜なんとなくキライだわ~」とか言ってた。言ってた気がする。

でもそれはセカオワのドラゲナイ現象や現在話題のJASRACに向けて言う「なんかキライだわ~」と同値で、実害も被っていないのに何となく世間の風潮に合わせているに過ぎなかった。
だから芦田愛菜がテレビから少しずつフェードアウトしていくのに並行して、僕は彼女に対しての印象なんてきれいさっぱり忘れ去っていた。


ところが最近、彼女はまるでラスボスのような雰囲気を纏ってテレビのバラエティ業界に返り咲きを果たした。

受験勉強で人は変わるというがそれにも限度がある。
ゲームオタクが自部屋に引きこもってレベル上げしていたらいつの間にか団長になっていたとか、もはやそういう次元を軽く凌駕している。
本当に恐ろしい。


というのも、どうして僕がここまで彼女に畏怖の念を抱いているのかというのは、彼女の「受け答え」にある。

さすがに弱冠13歳で番組のMCは務まらないので、彼女がバラエティ番組に出演する際は決まって「ゲスト枠」だ。
つまり、MCやレギュラー出演者の皆々から彼女に多くの質問が寄せられる。

「部活動はどうしたの?」「彼氏はできた?」「ももクロだと誰派?」

普通、まぁ中学生でテレビ出演していること自体普通ではないかもしれないが、頭のいい子供はその非凡さをひけらかすのが通例だ。

「好きな作家は?」と訊かれれば読んだこともないのに「そうですね、島崎藤村先生ですかねぇ(眼鏡クイッ)」とか言っちゃうし、「最近のマイブームは?」という質問に対しては「そうですね。数寄屋橋交差点で人間観察をすることですかね」なんて抜かしちゃう。

いまだ僕も抜け出しきれていない「世間との乖離こそが至高」という考えを信じてやまないのが頭のいい中学生の性質。

伊集院光風に言えば中二病ネットスラング的に言うならば厨二。


でも彼女は違う。

彼女は頭がいい。それはもう、本当に誰もが認めざるを得ないだろう。
僕だって本当は認めたくなかった。

でもこの間池上彰さんの番組出てたとき石油の体積の単位即答してた。知らねぇよ、なんだよ「バレル」って。初めて聞いたわ。

あぁ、もう負けた。完敗。
「知識だけあっても意味ないし」とか言って現実逃避してたけどもう無理。えぇ、認めましょう。


彼女はそう、物心付いたときから大人に混じって演技をしてきた。
知識があって、論理思考力があって、そして他人の期待に答える力(=演技力)がある。

僕だって「そうですね、島崎藤村先生ですかね(眼鏡クイッ)」とか言っちゃう子供ならば「フッ、イキがってやがるな」とテレビを前にガムでも吐き捨てる程度で終わるのだ。

だが彼女はどんな質問が飛んでこようと、おそらく年相応の受け答えをするはずだ。13歳、中学1年生らしい受け答え。13歳よりももっと13歳らしい受け答え。

それが僕にはどうしても恐ろしく見える。

やはり大人からすれば、子供というのは純粋無垢の象徴である。
穢れを知らない、闇も知らない、挫折も知らない、だからこそ「仕方がない」と何事にも折り合いをつけることができる。

でも彼女はもう違う。
テレビ業界なんて闇しかないし、これまでに「天才子役」と呼ばれることの葛藤、演技においての失敗や挫折、そうしたものをいくつも味わってきているに違いない。

なので精神年齢的にはもはや僕より上だろう。んなもんとっくの昔に追い抜かされている。人生経験も立っているステージもまるで違う。

僕なんて100均のスポンジみたいに密度スッカスカの人生。

だから、いや、だからこそ彼女が今現在も「芦田愛菜ちゃん」という子供を演じているのが怖い。
あるいは「中学1年生の芦田愛菜さん」を演じているのが怖い。
不適切な表現だが気持ちが悪くて仕方がない。

言うなればそう、60歳のババアがピンクのミニスカ履いて街歩いてるのに、誰もおかしいと思ってないみたいな感じ。

いや、違うか。違うな。


とにかく。
とにかく僕は、彼女が中学生らしいあどけなさを残した受け答えをするたびに悶絶していると、そういうお話。

それだけなので。さようなら。