こんなお好み焼きはイヤだ
お好み焼き。
そう、それは日本人の心。
半年に一回は食べたくなる魅惑の食べ物。
でも広島風とか言うと広島県民が怒るし、もしもモダン焼きといまいち違いが分からないとか言ってしまったが最期、もう広島県には出入り禁止になることは避けられない。
郷土愛、つまり心というのは繊細なモノ。
優しく触れば何てこと無いものも、少し爪を立てただけですぐに反逆者扱いだ。優しく撫でていても、逆撫でをすればそれは殴る蹴るの暴力と同じこと。
だから僕個人として、あまりお好み焼きという食べ物についてとやかく言うつもりはない。お好み焼きに殺されるなんて絶対にイヤだ。
とはいえ名前に「お好み」と付いてるのに好き嫌いで測れないというのも何だか違うような気もするが、まぁいいだろう。
それよりも僕が言いたいのはその食べ方だ。
正直、お好み焼きには何を入れても旨い気がする。何度か一風変わったお好み焼きを食べた経験があるが、これまでハズレだと思った例はない。
というのもそもそも「お好み焼き」自体が僕の好みであるので、その価値観は具材が少し変わった程度で揺れ動くほどでもないのだ。
でも食べ方を人に合わせるのは断じて許容できない。
何度も言うが「お好み」と付いているから食べ方だって十人十色だろう。
それはいい。好き勝手にオリジナルを極めてくれるのは結構。
でもそれをこちらにまで強要しないでほしいのだ。
これは声を大にして言いたい。
今から綴るおよそ3パターンの人々よ、お願いだから僕に構わないでくれ。
早速その壱。
- 焼く時間指定してくるヤツ
これはヒドい。
たしかにお好み焼き屋に行くと「美味しい焼き方マニュアル」とかストップウォッチとか置いてあるところが多い。片面5分でひっくり返してさらに5分。お手元のストップウォッチをお使いください。
でもさ、どうしてそれを他人にまで強要するの?
要らないよ、ストップウォッチ。
「待って。俺あと3分で焼きあがるからそれまで待ってて」って、そのストップウォッチ、要らないです。
あと僕が焼いてたらいつの間にか誰かがこっそり時間計ってて「今!今ひっくり返さないと!」って真に迫って脅してくるのホントにやめて。マジで怖い。
自分たちだけ正確に計っていればいいじゃない。どうせあなたたちは僕のお好み焼き食べないんだから。
それにほら。ルールとか規則に抗うのが若者の仕事なんだから、お好み焼きだけその範囲外ってのもおかしいでしょ。
君たちがいつも聴いてるJ-POPの歌詞にあるでしょ?ルールに縛られたくないとか決まったレールの上はイヤだとか誰かの言いなりになんてならないとか。
だからさ、僕の好き勝手に焼かせてほしい。
その弐。
- 勝手にソースとかかけてくるヤツ
これはまぁ大抵の場合ありがたいのだが、味付けというのもやはり好みがある。
僕はこう見えて薄味好きなんです。
アジフライにソースかけないし餃子にタレもラー油もお酢もかけないんです。
だからさ、お願いだから僕のお好み焼きをブラックホールみたいに黒く染めないでください。
ソースがお好み焼きからはみ出てジュワーッて言ってるよ?マヨネーズの油が鉄板の上ではねてる。危険。
「それがイイんじゃないか!」ってどういうこと?
鉄板に焦げが付いてバイトの兄ちゃんが大変になるだけだぞ?
あ、それから僕青のり要らない派なんです。ちょっとそんなにかけないで。
ごめん僕が悪かった。許して。
その参
- もういっそ全部仕切ってくるヤツ
極論だが、これは一気に萎える。食欲失せる。
「俺お好み焼き屋でバイトしてたとこあるんだよねー!」←これが危険信号。
もうソイツとお好み焼き屋に行くと決まれば人権なんて端からないものと思っておいたほうがいい。
ダメだ、注文前から何故か殺気立ってる。
「このソースじゃ理想の味にならんなぁ」って、ゴメンそれ醤油みたいだよ?
「どうせみんなお好み焼き頼むだろうから俺は焼きそばにしとくよ」って、そんな気遣い要らないです、はい。
注文する前からヘラをイジらないでください。さりげなくソース類を自分の元にかき集めないでください。
どうして青のりと鰹節をそんなに上からかけるの?
冷房強いからものすごい勢いであちこちに舞うんだよ。茶色と緑の粉雪。あれ、ここはサバンナの牧草地帯かな?
「バイトしてる時さぁ、青のりのことを『青田典子』って言ってる先輩がいてさぁ」
へぇ、そうなんだ。ところでさっきあんなに気にしてた時間30秒も過ぎてるけどいいの?
もうダメだ。早く帰りたい。助けてください。