お金がほしい

お金がほしい

先に謝っておきます。ごめんなさい。

性欲が消えた

性欲が消えた。
おかしい。まだそんな歳じゃないはず。

有効期限も賞味期限もちゃんと確認していたし、マニュアルに書いてあった用途だって今もちゃんと守っている。

だがもう我が息子からは生気を感じられない。
性器だけに。ってこれはマジで笑えない。

今や腎臓で漉された老廃物を流れに逆らわずに通すだけの存在。
謂わば血のかよった蛇口。この比喩とても気持ち悪い。

ちゃんと言うことだけは聞いてくれるのが唯一の救い。
でもそれだけ。
それ以上のことはしてくれない。
まさに平成の指示待ち人間状態。

こんな子に育てるつもりはなかった。
もっと健やかに伸びやかに、時には本能の赴くまま、直接は言わないけど心の中では人目も憚らずにバカやってくれてもいいと思っていた。

自分の思い通りになんてならなくていいから、ただ伸び伸びと育っていってほしいと、たしかにそう思ってやまなかった。

でも実際は違った。
もはや何の反応も示さない。道端の枯れ木のよう。
いつの間にこんな引っ込み思案になってしまったのか。

ついこの間まで朝起きたらちゃんと出迎えてくれてたじゃん。
顔を見る前から元気に挨拶してくれて、それがいつの間にか日々の励みになっていたんだよ?
それがこの前「おはよう」って言っても返事してくれなかったの、結構傷ついたんだからね?
ひょっとして反抗期なのかい?

たしかに息子は操り人形でもなければ親の所有物でもない。
立派に自立してこそ一人前というものだ。

でもさぁ、親心ってあるじゃん?
ホントにマジで心配してんだよ?

せめて既読くらいつけてくれよ。無理に反応しろなんて言わないからさ、ちゃんと飯食ってんのかなとか、そういうのやっぱり気になっちゃうじゃん。
生きてるかどうかくらい教えてくれてもいいだろ?

不満があったなら言ってくれてよかった。何てったって生まれたときからずっと一緒に大きくなってきた仲だろ?
時に喧嘩もしたけど、お前が先に突っ走って置いて行かれたこともあったけど、それでも何とかここまでやってきたじゃないか。

たくさん経験を積ませてやらなかったのは本当に悪かったと思っている。すまん。
世間という風を感じさせてやれなかった分、お前にしてみれば家の外なんて恐怖そのものだったよな。父さん分かるぞ、そういうの。

でもだからってさ、理由も告げずに部屋に篭らないでほしい。
そのくらいのわがまま言ったってバチは当たらないだろ?

せめて「もう限界です」くらいの書き置きがあったらさ、こっちだってネチネチ食い下がったりしないって。

 



でもな、ごめん。本当は理由くらい知ってるんだよ。
気付いたのは昨晩遅くになってからだ。

父さんふと思ったんだよ。
「そういえば今日、誰とも話してない」って。

びっくりした。まさに青天の霹靂。

思い返せばここ最近ずっとそんな調子だった気がする。

この間も食堂のおばちゃんに「ごちそうさま」って言ったのがその日初めて声を出した瞬間で、ものすごいガラガラ声で自分でも驚いたよ。
LINEもメールも知らない企業ばかり送られてくるし、最近のテレビは面白くないから唯一の楽しみである食事も早々に終わっちまうんだよな。
飯食ってクソして寝て終わり。

そりゃこんなつまんない毎日ばかりだったらさ、嫌気が差すのも分かるよ?
昔はこうじゃなかったもんな。

高校生のときなんてさ、当時にしてみれば他愛もない日々だったけども、今になって思い起こせば毎日エキサイティングアミューズメントパークだったよ。

リビドーなんて言葉知らなくたって、毎日楽しければそれでよかった。
こんな日々に終わりなんてこないって、僕たちそう信じて疑わなかった。

 
まぁ、何があったって訳でもないのだが。

 


でも始まりがあれば必ず終わりがくる。諸行無常の響きあり。
高校卒業と同時に、いつしか俺たちすれ違いが起きてたんだね。
本当はずっと我慢していてくれて、ついに我慢の限界を迎えちまったのか。気付いてやれなくてごめん。親失格だ。



え、待って。
じゃあ終わったの?

僕の息子はいつの間にか死んでしまったんですか?

ちょっ、それは、それだけは勘弁してください。
まだ始まってもないんです。

せめてスタートボタンだけ、そこだけでいいから押させてください。
どうか、どうかよろしくお願いします!!

え、ダメ?そこを何とか...!